「暮らし」という言葉は、日常生活や日々の営みを指す言葉です。具体的には、住む場所や食事、仕事、家族との時間など、人が日々の生活を送るために行うすべてのことを含みます。
日本語で「暮らし」という言葉を使うときは、単なる物質的な側面だけでなく、心の満足や生活の質、幸福感なども含めて、広い意味での日常のあり方を表現することが多いですね。人生も、「暮らし」に関連される言葉になるようです。
「住まい」という言葉を使う際には、居住している場所そのものに対する思いや、そこに住むことで得られる安心感や快適さといった感情も含まれることが多いです。
たとえば、「心地よい住まい」や「住まいを整える」といった表現は、単に建物だけでなく、その場所での暮らしや快適さを大切にする意味合いが込められています。
古い賃貸住宅に住むことには多くの魅力と課題がありますが、それを楽しみながら快適に生活する方法もたくさんあります。
・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。
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収録されている短編の原作を基にしたボイスドラマをYouTubeで公開しています。ご視聴頂ければ幸いです。
ボイスドラマ『未来からの贈り物』
ボイスドラマ『陰鬱な朝を迎えて』
「夏の終わり」試し読み(抜粋)
最寄り駅の南側は、円形の噴水を囲う形のバスターミナルになっている。そのバス停付近の建物の一階に眼鏡店があった。
歩道に面する、三メートル幅の窓ガラス越しに木目調のフローリングが見えて、店内の天井から、アイアンタイプのシックなシャンデリアが吊下がっていた。
アンティークな雰囲気のある店で、夜になると、シャンデリアの煌々とした灯りの照り返しが窓ガラスを琥珀色に染めあげ、歩道を行き交う人の目をひととき奪うことがあった。
六月初旬の日曜日の午後、僕はその眼鏡店に初めて入った。
店の奥で、たまご型の眼鏡を掛けた若い女の店員が立っている。ボブの髪型はあごの下できれいに切り揃えられていて、店員に似合っているように思えた。視線が合うと、店員は「いらっしゃいませ」と言って、笑顔を見せて会釈した。
出入り口扉の右側の飾り棚が視界に入った。棚の上に、色々なタイプの眼鏡が置かれている。僕は近づいて眼鏡を物色した。
しばらくして、背後から店員が声を掛けてきた。
「気に入ったの、見つかりました?」
振り返ると、先ほどの店員がほどよい距離に立っている。鼈甲色の眼鏡がしっくり馴染む女は、太い眉を少し寄せた。
制服の胸元の白いプレートに記された、「河野奈津美」の文字が目に留まったが、直ぐに視線を戻した。
「いや、迷ってしまって……」
後の言葉が続かない。戸惑い、掌に脂汗が滲んでくるようだ。
「気に入った眼鏡が見つかったら、声を掛けて下さいね」
奈津美は、口元に笑みを浮かべた。肌色の唇から白い歯を覗かせ離れて行った。
僕はしばらく思案していたが、結局、奈津美が何種類かの眼鏡を薦めてくれて、その中のひとつを選ぶことになった。それはグレーのプラスチックフレームで、スクエアタイプと呼ばれる眼鏡だった。
縦長の姿見の前で、良く似合っていますよ、と奈津美は言った。
僕は眼鏡よりも、寄り添うように立っている奈津美が気になって仕方がなかった。
彼女は僕が選んだ眼鏡を見ているというのに、僕は奈津美が掛けている鼈甲柄の眼鏡の奥でゆらぐ、優しいまなざしが気にかかるばかりだった。極端に言えば、眼鏡などどうでもよかったのだ。褒めてもらった眼鏡を選んだのは、もちろん、彼女に好意を寄せたからだ。
眼鏡店から離れても、彼女への思いは募るばかりで、脳裏から離れることはなかった。……つづく。



日頃お世話になっている方から感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。
これはとても情景豊かなシーンですね。駅前のバスターミナルから始まり、眼鏡店の雰囲気や登場人物の心理が細かく描かれていて、特に主人公の内面的な感情が伝わってきます。
まず、眼鏡店の描写がとても効果的です。シックでアンティーク調のインテリアやシャンデリアの煌びやかな光が、店の独特な雰囲気を引き立てています。そのため、読者はすぐにその空間のイメージを持ちやすく、特に夜のシーンで通行人の目を奪うという表現が視覚的に鮮やかです。
また、主人公が眼鏡店の「河野奈津美」という女性店員に惹かれていく様子も、非常に自然でリアルです。最初は商品の眼鏡に気を取られているかのように見えますが、実際には奈津美の存在が気になっており、最終的には彼女への好意が前面に出てきます。この変化が、主人公の内心の揺れや戸惑いと共に繊細に描かれているのが印象的です。
特に、主人公が自分でも気づかないうちに奈津美を意識してしまう瞬間が、眼鏡を選ぶ場面や彼女の視線に焦点を当てた描写で見事に表現されています。奈津美の存在感が徐々に主人公の心を支配していく過程が、淡々とした言葉の中に緻密に描かれていて、読者としても共感しやすいです。
結局、選んだ眼鏡がどうでもよくなってしまうほど、奈津美への思いに傾倒していく主人公の心情が、この短い一連の出来事の中で強く伝わってきます。そして、最後に「眼鏡店から離れても、彼女への思いは募るばかりで」という締めくくりが、彼の感情が簡単には消えないことを示唆していて、続きが気になるような終わり方になっています。
全体的に、雰囲気がしっかりしていて、感情の描写が丁寧な印象を受けました。物語の展開もさりげなく、日常の中の非日常的な感情の高まりが美しく表現されていると思います。
切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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