・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。※当ブログは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。また、第三者配信の広告サービスを利用しております。
月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「東京物語・Ⅱ」
「東京物語・Ⅱ」試し読み(抜粋)
東京在住の先輩から結婚式の招待状が届いたのは、お盆休みが始まる数日前のことだった。
以前勤めていた職場の先輩からの便りに戸惑ったが、頼りない僕の面倒を見てくれた人のことを思い出し、結婚式に参加することにした。当時、先輩とあかねと三人で近くの居酒屋で過ごしたことは、懐かしい思い出でもあり、辛い気持ちにもなった。
十月初旬の夜、僕は大阪駅から夜行バスに乗って東京に向かった。新宿駅のバスターミナルに着いたのは土曜日の朝だった。停車したバスの座席から、寝不足ぎみのまなこで窓ガラスに目を向けると、小雨に曇った新宿の街が映っているのが見えた。
五年ぶりの光景にふれると、少し、感傷的な気分に浸ってしまった。
バスを降りて折畳みの傘をひろげた僕は、濡れた路面にキャリーバッグを従え、駅前の繁華街に足を向けた。
新宿に住んでいたころ、よく通っていたスターバックスの店を見つけた。その店でコーヒーとサンドイッチを注文して、外の通りが見えるテーブル席に腰を落した。
大きな窓ガラス越しに、行き交う人たちの姿があった。その姿をぼんやり眺めながらコーヒーを飲んでいたが、ふと、テーブルに置かれたサンドイッチに視線が留まると、当時の記憶がありありと蘇ってきて、ふう、と、ため息がこぼれてしまった。
当時、二十二歳だったあかねの容姿が目に浮かんだのだ。
そう言えば、ハムとソーセージに、チーズとトマトを合わせた「ハム&チーズサンドイッチ」と、たっぷりの野菜にチーズをトッピングした組合せのサンドイッチは、あかねのお気に入りの食べ物だったはずだ。この店で、二組のサンドイッチを分け合って食べたことを思い出し、そのときの情景が瞼に浮んで来る。
「どっちにする」
あかねはそう言って、きれいな歯並びを見せて微笑んだ。ふわふわの頬にえくぼをくっきりさせて、切れ長の目で僕を見つめる。それも、悪戯っぽいまなざしで。
あかねはその日の気分によって、好みのサンドイッチを変える。だから僕は、いつもどちらを取ればよいのか戸惑ってしまうのだ。
「どっちでもいい」
「いつも優柔不断なんだから」
あかねは不満気な表情を浮かべ、ほんのわずかに唇を歪めると、たっぷりの野菜にチーズをトッピングした組合せのサンドイッチを手に取った。そして両肘をテーブルにたてるようにして、サンドイッチを両手で包み込みながら口へと運ぶ。……つづく。
日頃お世話になっている千尋さんから感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。
わあ、なんだか切なくて、しっとりした雰囲気の小説ですね。主人公が東京の結婚式に向かう道中で、昔の思い出がよみがえる様子が、静かに描かれていて、感情がじわじわと染み込んでくる感じ。
特に、あかねとの思い出がすごく印象的。サンドイッチをどっちにするか悩んでいたり、無邪気に笑うあかねの姿が鮮やかに浮かんでくるところ、ちょっと切ないけどあったかい気持ちにもなりました。何気ない日常の中でのふとしたやりとりって、こうやって時間が経つとすごく大切に感じるんですよね。あかねの「いつも優柔不断なんだから」ってセリフも、軽く言ってるけど、当時の二人の関係性が見えてくるし、今はもう手の届かない過去の一瞬だったんだなっていう寂しさも感じさせます。
そして、主人公が東京に着いた時の、新宿の小雨に曇った街並みやスターバックスの描写が、すごくリアルで懐かしい。自分も似たような状況に置かれたら、過去を思い出して感傷的になるだろうなって共感しちゃいました。
全体的に、淡々としているけど、その中にいろんな感情が潜んでいて、読む側としても自然に感情移入できる作品だと思いました。これから主人公がどう結婚式に向かうのか、また何を感じるのか、続きが気になりますね!
いつもうれしくなるような感想、どうもありがとう。
こちらこそ、素敵な小説を読ませていただいてありがとうございます!感想を書くたびに、あなたの作品が持つ繊細な感情や描写に触れられて、とても楽しいですし、心が温かくなります。これからもぜひ作品をシェアしてくださいね!続きを楽しみにしていますし、どんな感想でもお伝えできるようにお手伝いさせてください。
またいつでも声をかけてくださいね!😊
切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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