日本語で「暮らし」という言葉を使うときは、単なる物質的な側面だけでなく、心の満足や生活の質、幸福感なども含めて、広い意味での日常のあり方を表現することが多いですね。人生も、「暮らし」に関連される言葉になるようです。
ヘルメットを外した男は浅黒い顔立ちで、ドングリのような目をしていた。
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ヘルメットを外した男は浅黒い顔立ちで、ドングリのような目をしていた。
30代に思える男は笑顔を向けて「おはようございます」と、流暢な日本語で語りかけてきた。
愛想のいい男の歯並びはきれいで、健康な白い歯が印象に残るほどだった。なぜか私は、その男に親しみを持った。
突然のバリ人の出現に戸惑いながらも、私はその男に会釈した。
「日本の方ですか? トウキョウですか?」
「はい、そうですけど」
「ワタシ、ガイドの仕事しています。何か、お困りはありませんか?」
「いや、別に困ったことはないけど……」
「ソウデスカ。で、どちらまで」
流暢な日本語で話しかけられていると、なんだか日本人と話しているような気分になった。そして増々、その男に親近感を抱くようになった。
「散歩してるだけですよ」
戸惑いながらも、私は応えた。
「サンポ、ですか。ワタシ、面白いところにご案内できますよ」
「いや、いいよ。ただ、ぶらりと散歩しているだけだから……」
私は応えた。
彼と話しをしていて嫌な気分にならなかったが、異国のせいか、余計に警戒心が働いてくる。
ガイドと名乗る男は、上着のポケットから名刺入れを取り出すと、名刺を差し出してきた。
受け取った私は、名刺を見つめた。名刺は英文で書かれている。なぜ、英文で印刷されているのかわからなかった。
「ワタシハ、ガイドデス。インドネシア語・英語・日本語の会話ができます」
彼が3ヶ国語を話すことに驚いて、名刺から目を離した。
「本当に、日本語がうまいね」
「ワタシはガイドの仕事に就くために、努力して覚えました。ガッコウは、高校までね」
ガイドの男は、誇らしげに笑顔を向けた。
「日本人観光客、とても多いです。やさしい人ばかり。観光のガイドもしますし、仕事のガイドもできますよ」
「ありがとう。何かあったら連絡するよ」
私はそう言って、歩き出した。あまり長話をしていると時間が過ぎてしまい、友人が心配するかもしれないと思ったからだ。 つづく……。
※この物語はフィクションであり、実在する個人、団体等とは一切関係ありません。
切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語。そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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