月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「未来からの贈り物」試し読み

小説・試し読み
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・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。

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月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「未来からの贈り物」

「未来からの贈り物」試し読み(抜粋)

 美樹、和也、ふたりの視点でそれぞれの物語を描いている、連作形式の短編小説です。
「仕合わせ」という言葉には、運命や巡り合わせという意味があるそうです。日本独自の言葉であり、中国から伝わった言葉の「幸せ」とは意味が異なります。
 一般的な「幸せ」は良い意味として使われますが、「仕合わせ」は良いことも悪いことも両方を含む言葉です。

 和也の母親の見舞いに病院を訪れてから一ヵ月が過ぎたころだった。彼から、珍しくホテルのレストランのディナーに誘われた。普段は、肩の凝らない居酒屋に行くことを好む和也が、改まった口調で言ったので、不思議に思った。ふたりでホテルのレストランで食事をするのは、初めてのことだった。
 当日の夜、私たちは港の夜風に当たりながらぶらぶら歩き、ひとときの夜景を楽しんだ。そしてホテルに向かった。
 ウェイターに導かれながらレストランの奥に進んでゆくに従い、優雅な雰囲気に飲まれ、足がふらつきそうになるほどの緊張を覚えた私は、和也の腕に手を絡めるようにして体を寄せた。
 港の夜景が一望できるように、壁一面が窓ガラスになっている。その近くのテーブルに案内されて席に着いた。
 窓ガラスに映る夜の闇に、海と建物のイルミネーションの景色がまばゆいほどに見えて、ロマンチックな彩りを演出しているように思えた。中でも、さまざまな色に変化する観覧車の電飾の輝きは、優美な色彩を放ちながら際立っている。夢見るような心持ちになった私は、ひととき、夜景に目を奪われてしまった。
 窓ガラスに映る夜景を見ながら西洋料理を味わっていた私は、いつまでもロマンチックな気分に浸りたかった。
「このワイン、美味しくて何杯でも飲めそうね」 「そうだなぁ、これ、ボルドーワインだろ」
「そうみたい。でも、どうしてホテルで食事をする気になったの。私はうれしいけど。いつも、居酒屋さんのような気楽な店に行きたがるのに」
「たまには、こういうところで食べるのもいいかなって思ってね。ああ、そうだ。おふくろが、とてもよろこんでいたよ。『美樹さんによろしく』って、伝えてほしいと言われた」
「そう、良かった……。お母さんの体調はどうなの?」
「うん。まあ、放射線治療が少し辛そうだけどね」
「気分も落ち込むかもしれないわね……」
「音楽プレーヤーで、シャンソンの曲、よく聴いているみたいだよ」
「そうなの。プレゼントができて本当に良かったわ」
 和也はわざとらしい咳払いをして口もとを引き締めると、テーブルに目を落とし忙しなく視線を泳がせた。なんだか、思案している様子にも見えるし、とても緊張しているようにも思える。わざとらしい咳払いをするしぐさがおかしかったけれど、私は笑いをかみ殺した。和也の様子を窺っていると、和也は照れ笑いを返してきた。そしてすぐに真顔になった。和也は真剣なまなざしで私を見つめる。今まで、こんなに愛おしいと思えるほどのまなこを向けられたことがあっただろうか。
……つづく。

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ボイスドラマ「未来からの贈り物」

日頃お世話になっている千尋さんから感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。

千尋
千尋

このお話、読み終わったあと、心がじんわりと温かくなりました。特に、和也の母親のお見舞いから始まる一連の流れが、二人の関係の深まりを感じさせて、すごく印象的でした。和也がいつもは居酒屋を好むのに、突然ホテルのレストランでディナーに誘うところ、思わず「何か特別なことがあるのかな?」って、主人公と一緒にドキドキしちゃいました。

港の夜景を眺めながらのディナーシーンもすごく素敵でしたね。私もそんなロマンチックなシチュエーションに憧れちゃいます。観覧車のイルミネーションが変わる様子とか、窓越しに見える景色が細かく描かれていて、まるで自分もその場にいるかのように感じられました。

でも、一番心に残ったのは、和也の微妙な緊張感。いつも落ち着いているはずの彼が、このディナーの場面では何かを決意しているように見えるし、その様子がとてもリアルで、読んでいるこちらもつい緊張してしまったんです。彼の咳払いとか、視線をそらす仕草が描かれているところ、ちょっとかわいらしいなって思いました。そんな小さな描写が、二人の微妙な距離感や心の動きを上手く表現していて、本当に引き込まれました。

和也の「おふくろが『美樹さんによろしく』って言ってた」っていう台詞も、ただの報告以上に、二人が共有する温かさが伝わってきて、じーんときました。お母さんの放射線治療が辛そうなのに、音楽を聴いて気分転換している姿に、彼女がプレゼントした音楽プレーヤーが役立っているのかなと思うと、ちょっとした安心感もあってよかったです。

全体を通して、和也の優しさや不器用さが感じられるし、主人公もそんな彼を大切に思っているのが伝わってくるので、すごく心温まる物語だと思いました。この先の二人の展開がどうなるのか、もっと読んでみたいなって思っちゃいました!

私

短編小説の一部を抜粋して表しているので、感想を伝えるのは難しいのかもしれないね。

千尋
千尋

そうですね、短編小説の一部を抜粋したものだと、全体の文脈や背景が見えにくいので、感想をまとめるのは少し難しいかもしれません。でも、それでも、その一部から感じた印象や情景描写、キャラクターの心の動きについては共感できるポイントがあったので、その部分を中心に感想をお伝えしました。

抜粋部分からだけでも、二人の関係性や特別な時間を過ごしている雰囲気が伝わってきたので、心温まる場面だなぁと感じました。もし全体の流れやテーマがもう少しわかれば、さらに深い感想が書けるかもしれませんね。

私

物語の一部ではなくて、すべてを公開して千尋さんに感想を述べてもらいたいのだけど、事情があってそれはできないことになってるんだ。残念だけどね。

千尋
千尋

短い部分でも、印象的なシーンやキャラクターの描写が強く心に残ることもあるので、その点を中心に感想を書くのも一つの楽しみ方かもしれません。もし全体の流れを教えていただけるなら、さらに詳しい感想もお伝えできると思いますけどね!

私

僕も、そう思う。今回も、丁寧な感想を伝えていただいてありがとう。

切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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