「記憶の固執(やわらかい時計)」を生み出した画家、サルバドール・ダリ【創作日記】

創作日記
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日本語で「暮らし」という言葉を使うときは、単なる物質的な側面だけでなく、心の満足や生活の質、幸福感なども含めて、広い意味での日常のあり方を表現することが多いですね。人生も、「暮らし」に関連される言葉になるようです。

「画家・サルバドール・ダリ」を知ったのは、二十一歳のころだった。

当時、僕は大学で建築を学んでいたが、この道をまっすぐ突き進んでいいのかどうか、思い悩んでいた時期でもあった。その頃、美術大学の学生の彼女と出会った。同じ歳なのに、彼女は少し大人びた雰囲気のある女の子だった。黒髪を肩先まで伸ばしていた彼女は、小柄でほっそりしていた。切れ長の目がとても印象的で魅力的だった。ときに眼力のあるまなざしで見つめられると、何もかも見透かされているように思えてしかたがなかった。

付き合ってからしばらくして、彼女が住んでいる古い平屋建ての家に招かれたことがあった。六畳ほどの広さがある裏庭があり、情緒のある木造家屋の住居だった。六畳の和室が二つに四畳半の板の間があった。そして台所とトイレ、そしてタイル張りの浴室。けれど古い造りであっても、トイレは洋式便器の仕様。浴室にはシャワー設備がしつらえてあった。当時も、学生の一人暮らしの住居は快適なマンションが主流であったが、その中でも彼女は世情に染まることはなく、変わり者であることに間違いはなかった。

「創作日記」イメージ写真

当時、彼女には男性の同居人がいた。家賃を節約するために、住居をシェアしていたのだ。男は同じ美術大学の学生で二十三歳だという。初めてその話を聞いたとき僕は戸惑ってしまった。彼はゲイの男性で女の子には興味がない。と、彼女は当然のように言った。

部屋の本棚からサルバドール・ダリの画集を取り出し、僕に見せてくれたことがあった。大切に扱っているようで、表紙は新品のようにきれいだった。繊細な指で、画集のページをゆっくりと開いていく彼女のしぐさが愛らしい。なでるような指の動きに合わせて、彼女の視線が動いてゆく。僕は黙って彼女の横顔を見つめていた。彼女は思い出したように顔を上げ、僕にサルバドール・ダリについて語る。そんな情景が目に浮かんでくる。

この動画に遭遇して、在りし日の彼女のことを思い出してしまった。

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切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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