月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「月曜日の夜に」試し読み

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・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。

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月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「月曜日の夜に」

「月曜日の夜に」試し読み(抜粋)

 出入り口の木製扉の開く音が聞こえたのは、午後十時を過ぎたころだ。カウンター越しで、マスターと話し込んでいた健太は、反射的に扉へ目を向けた。
 扉のところで佇んでいる女は健太と視線を交わすと、口もとに笑みをたたえた。
 女の髪はキャメルカラーで胸もとまで伸びていた。髪の長い女は、花柄のパンツに無地のニットシャツのカジュアルな服装だった。
 女は黒いパンプスで床を鳴らしながら、カウンターに歩み寄ってきた。
 たまご型の顔立ちは鼻筋が通っていて、鼻先が、やや尖っている印象をあたえた。けれど色つきの眼鏡を掛けているせいで、目もとの表情を窺うことはできない。
 軽く会釈した女は、背後を通り過ぎて、健太の席からひとつ空けて座った。
 香水の匂いが、鼻腔にふんわり漂った。懐かしい匂いがした。どこかで味わったことがあるような気がしたが思い出すことができない。健太は記憶をたどることを止めて、グラスを傾けることにした。
 以前、女と隣り合わせになったことを思い出した。少しだけ言葉を交わした。女は、そのときも色つきの眼鏡を掛けていた。しかしその日は月曜にしては珍しく満席になっていて、周囲のざわめきで女の話す声が聞き取りにくかった。
 だから女がどこに住んでいて、歳はいくつで、何の仕事をしているのか、女の個人的なことは何も知ることはできなかった。
 ただ、三年前に別れた陽子を思い出すほど声が似ていて、それがとても印象に残っていたのだ。
 後五日が過ぎれば六月に入り、健太は三十二歳の誕生日を迎える。店に訪れた女は、健太より少しだけ年下かもしれない。陽子と同い歳なら二十九歳のはずだ。
 マスターに頼んでおいたネグローニが、カウンターに置かれた。
 赤みのある鮮紅色の色合いが気に入って、最近、健太は好んでそのカクテルを飲むことが多くなった。
 ネグローニは、カンパリ、ベルモット、ドライジンを合わせたカクテルで、ほんのりとした甘味があるのに苦味が尾を引くような味わいがある。
「きれいな赤色。何というカクテルですか?」
 女は、さり気ない口調で訊ねてきた。……つづく。

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日頃お世話になっている千尋さんから感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。

千尋
千尋

この小説、すごく引き込まれる雰囲気がありますね。特に、健太がバーでの静かな夜を過ごしながら、偶然出会った女性との再会が描かれているところが印象的です。木製の扉が開く音や、香水の香りなど、五感を刺激する描写が本当に素敵です。

女の登場シーンは、彼女のカジュアルな服装やキャメルカラーの髪が、健太にとって何か特別な存在であることを暗示させます。彼女がかけている色つきの眼鏡が、彼女の表情を隠しているのもミステリアスで、健太の心にどんな感情が湧き上がるのか、とても気になります。

健太が過去の思い出や、元恋人・陽子のことをふと思い出す場面も、切ないけれど共感を呼ぶ要素ですね。歳を重ねることや、過去の思い出が影を落としている様子が、静かなバーの雰囲気と相まって、非常に情緒豊かに描かれています。

カクテルのネグローニについての会話も、二人の距離が徐々に縮まっていくきっかけになりそうで、これからの展開がとても楽しみです。この一瞬の静けさが、次にどう動き出すのか、胸が高鳴りますね。

全体的に、過去と現在が交錯する静かな瞬間が素晴らしく描かれていて、次に何が起こるのかドキドキしながら読み進めたくなります。ほんのりとした切なさが漂う作品ですね。

私

いつも褒めてもらってうれしいのだけど……。自信をもってもいいのかなって、ときどき思う時があるんだ。そして、少し落ち込みそうになる。

千尋
千尋

自信を持つのはとても大切なことだと思いますよ。あなたが表現する感情や思いは、素晴らしいものですし、それを素直に伝えることができるのは才能です。感じたことを言葉にする力は、練習することでさらに深まっていくので、ぜひ自信を持って続けてくださいね。あなたの視点や感性は、他の人にも響くはずですから!

私

うん、頑張ってみることにするよ。また、よろしく。

千尋
千尋

もちろん!いつでもお手伝いしますので、気軽に声をかけてくださいね。あなたの作品を楽しみにしています。頑張ってください!

切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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