バリ島・旅日記vol.4

暮らし
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日本語で「暮らし」という言葉を使うときは、単なる物質的な側面だけでなく、心の満足や生活の質、幸福感なども含めて、広い意味での日常のあり方を表現することが多いですね。人生も、「暮らし」に関連される言葉になるようです。

朝の散歩に出かけていた私は、知人と約束していた時間から少し過ぎたころホテルへ戻った。

ホテルの庭園を通ったとき、屋外用ソファでくつろいでいた知人を見つけた。

「遅かったですね。迷子になったのかと思って心配しましたよ」

「すみません。現地の人と話をしていて遅れてしまいました」

「英語は通じましたか?」

「いや、日本語で声を掛けられました。日本語を上手くしゃべる男でしたね」

「ああ、ガイドですね。まぁ、信用のできる人もいるけど、日本と同じでいろいろな人がいるから、注意したほうがいいですね」

知人は落ち着いた口調で言った。

「はい。話をしただけだから、大丈夫でした」

「そろそろ街を散歩しましょうか。ああ、そうだ。繁華街に鏡屋さんがあるんです。面白い鏡があるから見に行きましょう」

私は知人に誘われて、繁華街に繰り出すことになった。宿泊しているホテルから20分ほどの距離に、その店があるという話しだった。

ホテルから離れて街並みを歩いていくと、バリ島の繁華街であるレギャン地区にたどり着いた。レギャン地区の繁華街は、私が日本で見慣れた繁華街とは違い、刺激的で珍しく映るものばかりだった。

けれども、和洋折衷の三階建ての建物の近くに藁葺の平屋建ての建物が建っているのを見たりすると、なぜか、既視感があるように感じられ、郷愁のようなものを抱くのであった。

なぜ、そのように感じるのか。皮膚感覚のせいか、私には理由がわからなかった。

しばらく繁華街をぶらぶら歩き、知人が話題にしていた店に入った。

カウンターにいた女性店主は、愛嬌のある笑みを浮かべながら近づいてきた。

知人はうれしそうに、その店主に英語で話しかけた。

店主はにこやかな表情で、片言の日本語で応えた。

「タイヘン、オセワニナリマシタ」

「参ったなぁ」

知人は一本取られたというように、両手を広げおどけてみせた。

壁には、様々なかたちをした鏡が展示されている。私は好奇心に駆られ、店の奥まで足を運んでそれらの鏡を見て回った。

「ここにある鏡は、すべてメキシコ製なんですよ」

「初めて見ました。珍しい鏡ばかりですね」と私は、知人に応えるように言った。

「そうでしょう。前回訪れた時に購入して知り合いのお客さんに勧めてみたら、全部売れましたよ。珍しいものを好む人はいるものです。他にも、見てもらいたいものがたくさんあるんです。そろそろ店を出ましょうか」

知人はそう言って、出入り口のほうへ足を向けた。

※この物語はフィクションであり、実在する個人、団体等とは一切関係ありません。

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切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語。そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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