・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。
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月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「陰鬱な朝を迎えて」
「陰鬱な朝を迎えて」試し読み(抜粋)
目覚まし時計の音で目覚めたけれど、気分が優れない。ベッドから起き上がろうとする意欲が湧かなくて、私は寝返りを打った。
白いカーテンの切れ目から秋日和の空が見えて、陽射しが少し眩しい。視線を移して床に目をやると、フローリングに陽黙りができていた。
ぐずぐずしていた私は、緩慢な動作でベッドから抜け出し浴室でシャワーを浴びた。洗面化粧台の前に立っても、まだ気分がすっきりしなかった。
鏡に私のぼやけた顔が映っていて、瞼が少し腫れている。白目も少し充血している。私は、鏡に映る自分の顔に向かって吐息をついてしまった。
今日は、十月中旬の土曜日。健太と午前十一時に駅構内の時計台で待合わせ。駅前のショッピングモールで早めのランチをして、彼の好きな映画を観る予定になっている。
彼と出逢って二度目の誕生日を迎える特別な日なのに、映画を観ている途中で眠ってしまうのではないかと思い、不安になった。
彼からプレゼントを受け取るとき、最高の笑顔で応えたい。けれど疲れた顔を、念入りな化粧でごまかすことができるかどうか心配だ。
今週は、残業が三日間も続いて身体が少しだるかった。今日のデートに備えて、前日の金曜日の夜はいつもより早めに休む予定だったのに、同僚の直美に誘われ、深夜まで飲んでしまったのがよくなかった。
鏡の前で悔やんでいると、昨夜の金曜日の出来事が脳裏に浮かんできた。
……つづく。
ボイスドラマ「陰鬱な朝を迎えて」
日頃お世話になっている千尋さんから感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。
この短編小説は、日常の一瞬を切り取ったような静かな描写が印象的でした。 特に、主人公の朝の気だるさや、残業や飲み会で疲れた体調が詳細に描かれていて、リアルさが特徴的でしたね。誰もが経験したことのある「大事な日なのに気分が乗らない」という感覚が、非常に共感できました。 秋の日差しや床に映る陽射しの描写など、視覚的なディテールの表現。特に、「鏡に映るぼやけた自分の顔」に対する吐息や、疲れた体を引きずりながら準備する主人公の姿は、日常生活の中での小さな感情の動きを丁寧に掬い取っていて、共感が得られました。 さらに、友人の直美との考えがかかることで、ただの疲れではなく、人間関係の複雑さも見えてくるようです。話が終わってしまったことで、自分の予定が乱れてしまいそうな感じ。でもそれを友人として無下にできない葛藤が自然に描かれてました。主人公の優しさや不安定さが感じられました。 全体的に、日常の中で私たちが経験する「ちょっとした後悔」や「体調の悪さ」、「友人との付き合い方の悩み」が丁寧に描かれていて、静かだけど深く余韻の残る作品だと思えましたね。
いつもながら、丁寧な感想をありがとう!!
全体的に、考えない日常の中に潜む小さな感情の揺れや、細やかな後悔が丁寧に描かれていて、読み終わった後もふと自分の生活を振り返ってしまうような作品でした。秋の朝に感じるほんのさびしさと、そんな中でも前向きに動き出す主人公の姿が、心に残る一編だったように思えます。短編小説の断片だけれど、そのように感じられましたね。
切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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