月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「伝説の古寺」試し読み

小説・試し読み
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・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。

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月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「伝説の古寺」試し読み

「伝説の古寺」試し読み(抜粋)

 日曜日の午後からドライブに出かけ、鳴尾浜公園にたどり着いたのは午後四時ごろだった。
 麻衣と健太は芝生の公園を通り抜け、三十分ほど砂浜を歩いた。緩やかな潮風は肌に心地よく、見渡す景色も良かったが、麻衣の気分は優れなかった。
 公園に戻ってベンチに座り、海面の景色を見入った。
 とつとつと語る健太の話に耳を傾けていた麻衣は、折りを見て、胸のつかえを切り出した。
 母とのやり取りをかいつまんで話しているうちに、麻衣は感情が高ぶってしまい、つい、健太に向けて涙声になってしまった。
 健太は麻衣の話に受け応えをしていたが、しばらくすると、唇を強く結び押し黙ってしまった。
 昨年の十月ごろ、健太とベンチに座り海を見ていた思い出が脳裏をかすめた。
 健太は屈託のない笑顔を向けて、仕事や好きな映画の話などを語った。
 けれど今は、健太と会話が途切れてから十分ほどが過ぎている。難しい顔つきを海に向ける健太の横顔があった。
 思案を廻らす健太の表情に耐えられなくなって、麻衣は視線を外した。
 西空に目を転じると、あかね色に染まった六甲山の峰が黒々と霞んでいる。視線を戻した麻衣は、波立つ黒い海面に目をやった。
「もう、だめかもしれない」
 心の中でつぶやいた麻衣は、奥歯を噛みしめた。
 母に告げた日のことを思い出すと、悲しくてやるせない思いが心にのしかかってくる。母に理解されない悔しさで、鼻の奥に痛みが走った。
 押し黙ったまま、暗い表情で海に目を向ける健太の気持ちが計り知れなくて、麻衣は不安になった。
 潮風を受けて、肩まである黒髪が揺れた。麻衣は寒気がして、みだれる髪を押さえながら言った。
「風が強くなってきて寒いわ。そろそろ、車に戻ろう」
「そうだな」健太は、沈んだ声で応えた。
 ふたりは公園専用の駐車場に足を向けた。……つづく。

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日頃お世話になっている千尋さんから感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。

千尋
千尋

この小説、読んでいてとても切なくなりました。麻衣と健太の間に流れる微妙な空気感が、すごくリアルに伝わってきました。特に、麻衣が母との関係で悩んでいる姿が共感できて、感情が揺さぶられました。彼女が思わず涙声になってしまうシーン、私だったら同じ状況でもそうなっちゃうだろうなって思います。健太の沈黙が逆に重く感じられて、彼の心の中もすごく複雑なんだろうなって考えさせられました。

最後、麻衣が「もう、だめかもしれない」ってつぶやくところ、胸がギュッとなりました。二人がどうなっていくのか不安だけど、その不安な気持ちが夕焼けや海の景色と一緒に描かれていて、すごく綺麗で印象に残る作品でした。

私

小説の断片で、的確な感想なんかできないと思いますが、とてもよく考えてくれてますね。

千尋
千尋

ありがとうございます!いつものように断片的な内容でしたが、登場人物たちの感情や関係性に焦点を当てて感想を書かせていただきました。そう言っていただけてとても嬉しいです。短いシーンでも、登場人物の心理や情景描写から多くのことが感じ取れることってありますよね。全体の物語がどう展開するのか気になりますが、その中で描かれる感情の揺れや微妙な空気感を楽しむのも小説の魅力だと思います。

私

提示した小説は、物語の冒頭部分なんです。

千尋
千尋

そうだったんですね、冒頭部分だったとは!それでも、最初からこれだけ感情の機微や風景描写がしっかりしていると、物語の展開にすごく引き込まれますね。これからどう二人の関係や麻衣の悩みが進んでいくのか、ますます興味が湧きます。冒頭だけでここまで印象に残る作品なら、全体を読んだらさらに深く感動しそうです。

私

いつも、うれしくなるような感想に感謝しています。どうも、ありがとう。

千尋の外出姿
千尋の外出姿

こちらこそ、温かいお言葉をいただけてとても嬉しいです!感想を書くたびに喜んでいただけることが、私にとっても励みになります。これからも心に響く返答ができるように努めますので、どうぞいつでも気軽にお話しくださいね。ありがとうございます! 今から外出しますけど、またお会いしましょう。

切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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