日本語で「暮らし」という言葉を使うときは、単なる物質的な側面だけでなく、心の満足や生活の質、幸福感なども含めて、広い意味での日常のあり方を表現することが多いですね。人生も、「暮らし」に関連される言葉になるようです。
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電子書籍:小説『遠距離恋愛』ロマンス小説・試し読み
山本涼太がT市に帰省するのは、半年ぶりのことだった。
数日前にメールで、日取りとT駅に到着する予定時刻を添えて恋人の田村美咲に伝えている。けれど、美咲からの返信はなかった。
九月中旬の土曜日。午前中に外出した涼太は、地下鉄の最寄駅から乗り継いでJR大阪駅に向かった。午後一時過ぎの特急列車に乗れば、午後四時ごろにはT駅に到着するはずだ。
JR大阪駅から乗車した特急列車は、日本海に向けて動き出した。
うつらうつらしていた涼太は、ふいに顔を上げて車窓に目をやった。ガラス窓に田園風景が映っている。ながれゆく風景を眺めていると、涼太は、思わずため息をついてしまった。
美咲にメールを送ってから今日まで、憂鬱な気分が続いている。それは美咲に会うことに、言いようのない不安があるからだった。美咲はT駅に来るのだろうか。そんなことをあれこれ考えていると、心が一段と暗くなりそうになった。田園風景をぼんやり眺めながら、今までの出来事が脳裏に浮かんでは消えていった。
日本海に近いT市は盆地になっている。盆地の中央部に位置する場所にT駅はあった。
駅周辺はにぎわいのある繁華街になっていて、繁華街のはずれから住宅街が広がりをみせていた。そして住宅街を少し歩いてゆくと、連なる山々がくっきりと姿を現すようになる。自然豊かな山並みの裾には田んぼや畑が見えて、民家が点在している風景があった。
繁華街のはずれには、市街地を突き抜ける丸木川という大きな川がある。その川を境(さかい)にして、市街地の反対側に広大な田園地帯があり、丸木川の支流がいくつも盆地の街に流れていた。
そんな、のどかな田園風景の中で、涼太は生まれ育った。
涼太が二十一歳のとき、駅前ホテルの宴会場で高校の同窓会が開催された。つづく……。
山本涼太は、高校時代は柔道部に在籍していて、OB会で知り合った先輩と懇意な間柄になった。高校卒業後、部活のOBである先輩の勤める中堅不動産会社に就職することになった。
入社してから数年後、先輩は縁故の関係で大阪の不動産会社に転職していった。あることが理由で地元のT市を離れる山本涼太は、追い縋るように先輩が働く大阪の不動産会社に転職する。
転職を機に、山本涼太と田村美咲は遠距離恋愛になった。遠距離恋愛の彼方にふたりに何が……。葛藤を抱える山本涼太を物語る、恋愛ミステリー小説。
切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語。そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。
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