月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「東京物語」試し読み

小説・試し読み
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・本書は『未来からの贈り物』ロマンス短編小説集+『再会』ロマンス短編小説の統合版です。
・表題作『月曜日の夜に』を含む、十一編からなる恋愛のかたちを題材にしたロマンスストーリー。
・一話の文字数は2000~19,100文字程度で構成され、それぞれが独立した物語です。
・外出時の待ち時間、通勤時間、自宅やカフェ等でのくつろぎのひとときに最適な読み物です。

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月曜日の夜に: ロマンス短編小説集 Kindle版「東京物語」

「東京物語」試し読み(抜粋)

 東京本社に立ち寄った僕は、午後から山手線に乗り込み渋谷駅を目指した。
 混雑しているハチ公改札口を抜けてた僕は、駅前周辺の人波をかき分けながら明治通りに進んだ。そして宮下公園を通り過ぎてから、だらだら坂を上り始めた。上りながら、彼女がこの坂道を下ってくるような気が何度もした。
 けれど現実には、見知らぬ人たちとすれ違うばかりだ。もし、記憶にある出来事が現実に起これば、それは奇跡に近いというほかはない。彼女と付き合っている間、何度もこの坂道で偶然のように落ち合ったことを思い出した。
 デートの日は、いつも渋谷駅から携帯で連絡することが習慣になっていた。
「今、渋谷駅に着いたから。十五分ほどしたら、迎えに行くよ」
「うん、待ってる」
 彼女の弾むような返事は、いつも決まった台詞だった。自宅で待っていると思っていたら、ときおり、彼女とだらだら坂の途中で出会う。出会うというよりも、坂道の途中で、彼女は僕を待っているのだ。
 ボブの髪形が似合う白い肌の彼女は、坂道を下ってくる。だらだら坂の途中で出会うと、彼女は口許に笑みを浮かべ、とてもうれしそうな表情になる。軽い足取りで僕の隣に並び、きまって僕の左手を握りしめた。……つづく。

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日頃お世話になっている千尋さんから感想を頂きました。どうも、ありがとうございます。

この小説、すごく切なくて胸に響く話ですね。読んでると、主人公の「彼女」への想いが痛いほど伝わってきて、懐かしさや寂しさが入り混じった感情がこちらにも伝わってくるんです。

主人公が渋谷のだらだら坂を上るシーン、もう一度彼女と出会えるんじゃないかっていう淡い期待と、でも現実にはそれが叶わないっていう現実の狭間で揺れている感じが、すごくリアルで切ないなと思いました。何度も「彼女が坂道を下ってくるような気がする」っていう描写があるけど、実際には見知らぬ人とすれ違うだけ。そんな些細なことなのに、彼女の存在がいつもそこにあったような錯覚をしてしまう、その感じ、すごくわかるなぁって思いました。

特に、主人公が彼女と付き合っていた頃の思い出を思い返しているシーンが印象的です。渋谷駅から連絡を取る、坂道で偶然会う(でも本当は彼女がわざと待っていたんじゃないかっていう)、その繰り返しのやりとりが二人の距離感を表していて、すごく微笑ましいけど、今ではもう失われてしまった時間なんだなって考えると、本当に切ない。彼女が「待っている」姿を思い出すたびに、きっと主人公はあの頃の幸せな瞬間に戻りたい気持ちが強くなってるんじゃないかなって感じました。

そして、彼女が坂道を下ってきて、軽い足取りで隣に並んで、左手を握る…そのシーンがすごく象徴的ですよね。二人の関係性がすごく温かくて、自然で、安心感に包まれていたことがその一瞬でわかる感じがするんです。でも、今ではその手の温もりももう感じられなくなってしまったという喪失感が、最後まで漂っていて、読んでいるこちらまで少し切ない気持ちになります。

全体的に、失われた過去の幸福を思い返す物語で、誰しもが共感できるテーマだと思います。特に、恋愛の記憶が何気ない場所や習慣に結びついているところ、すごくリアルだし、忘れられない人との思い出を反芻するというのは、みんな少なからず経験することですよね。だからこそ、この物語が心に残るんだと思います。

私もこの主人公みたいに、ふとした場所や瞬間に過去の恋愛を思い出してしまうこと、あるなぁって思いました。何かすごく共感できて、読んで良かったです。

私

とても素敵な感想、ありがとうございます。物語のワンシーンを切り取ってみました。

千尋
千尋

こちらこそ、素敵なシーンを読ませていただいてありがとうございます!ワンシーンだけでも、情景や感情がすごく鮮明に伝わってきて、自然とその世界に引き込まれました。短いながらも、登場人物の心の動きや過去の思い出が細かく描かれていて、ぐっとくるものがありました。

もしこのシーンが物語全体の一部であるなら、主人公が過去とどう向き合っていくのか、また彼女との関係がどう進展していくのか、すごく気になります。こういった日常の中で過去の記憶と対峙する場面って、誰もが経験しそうなことだからこそ、共感しやすくていいですね。

また、ぜひ他のシーンや物語全体の展開など、シェアしていただければ嬉しいです。お話の続きをお聞きできるのを楽しみにしています!

切なくなるような、ロマンスが滲んでいる感覚を呼び覚ますような物語、そんな恋愛小説のかたちを描いてゆきたいと考えています。応援していただければ幸いです。よろしくお願い致します。

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